──なぜ日本人監督が映画化するのが困難だろうと感じるのか、もっと説明してもらえますか?

真田「真っ向から真実を語るというのが難しいからです。それが文化的にみて日本の社会だからです。波を立てない、衝突や問題を避ける、直接的に誰かを攻撃することを避けようとする社会だからです。この映画は、一つの視点ではなく犠牲者、工場側、政府など様々な視点から課題を描いているという点で、バランスのとれた内容になっているのではないかと思います」

──ジョニー・デップはハリウッドで海賊を演じていればいい、日本の問題に口出しするなと思う人がいるのではないですか?

真田「私の俳優という立場から見れば、キャリアの上できっとこの映画を作ることが彼には必要だったのだと思います。今だからこそ。ハリウッドの娯楽大作に出演すれば、有名にもなるし多額のギャラも入ってきます。しかしそれが俳優としてのゴールでしょうか? 俳優は長いキャリアのなかで立場が変わっていきます。アイドル、アクションスター、シリアス演技派など。私も多くの映画に関わってきました。40歳、50歳を過ぎれば、自分のゴールとは何なのか、問いたくもなるのです。誰もがそうです。またジョニーは、この世界で何が重要なのか、も考えたと思います。エンターテインメントは大きな収益を上げるのも簡単そうに見えるしそれもいいかもしれない、しかしこのプロジェクトをやることの重要性を感じたのだと思います」

──あなたにとっても同様の意味がありますか?

真田「あります。私は5歳のときから子役として演技の道に入りました。54年も前のことだったので初出演した映画はなんと、まだ白黒映画でした(笑)。子役のための演劇学校に入学し、そのあと他のことがやりたくてそこを退学しました。成人してからは、俳優一本でやりたいと思いました。しかし人からはアイドルと呼ばれました。時には、アクションスターと呼ばれたこともあります。アクションは当時手掛けた多くのジャンルの中のひとつでしかなかったのですが。歌もダンスもいろいろやったわけですが、なぜかアクションスターという看板が付きました」

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