ジャーナリストの田原総一朗氏は、安倍晋三首相と直接話をしたという。
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4月10日午後3時、首相官邸で安倍晋三首相と会って、約30分間、問いたいこと、求めたいことをほとんど言った。
まず、緊急事態宣言がなぜこれほど遅れたのか、と問うた。メディアでは財務省の強い反対があったためだと報じられていると言うと、安倍首相は、大きく首を振り、実は閣僚のほとんどが反対だった、と答えた。意外な答えであった。
数カ月前まで、どの新聞もテレビも日本の財政事情は危機的で、このままでは数年後に破綻(はたん)すると強く訴えていた。だからほとんどの閣僚たちが、緊急事態宣言などすると、100兆円近くの経済対策をしなければならなくなり、危機的な財政事情ではそんなことはとてもできない、と捉えていたのだという。
実は、私も3月初旬までは、緊急事態宣言に反対であった。だが、米国や欧州各国が緊急事態に突入していることで、新型コロナウイルスの恐るべき拡大は、新型コロナと人類との戦争、つまり戦時だと捉え、そこで緊急事態宣言をやるべきだと主張し始めたのである。
そう伝えると、安倍首相も「戦後、日本は戦争をしないということで、戦時の発想というものがなかったのだが、まさに田原さんのおっしゃる通り、戦時だと決断した」と答えた。
この決断については、各紙の調査で国民の7割以上が賛成している。
私は、この決断で安倍内閣の支持率は当然上がるものとみていたのだが、その後の各紙の調査でいずれも支持率が落ちている。これはどういうことか。国民の多くが、緊急事態宣言は出たが、感染拡大はとても抑えられない、とみているのだ。
たとえば、元大阪府知事の橋下徹氏はこう厳しく問うている。欧米各国では緊急事態時に外出規制などがあり、それを破れば処罰される。罰金が取られ、あるいは逮捕されることもある。ところが日本の場合は、あくまで政府の要請で、罰則規定がない。これでは、少なからぬ国民が要請に従わないのではないか。
自民党の国会議員の中にも、欧米の国々のように罰則規定を設けるべきだとする意見が少なからずある。