そのことを安倍首相に問うと、「確かに欧米のようにすべきだという意見が多いのですが、罰則規定を設けるのは、憲法改正と同様に国民の同意が必要です。田原さんはどう思いますか」と逆に問われた。

 私は、罰則規定は反対だ。しかし、新型コロナの影響で損失を受ける企業や人々に対して、しっかり補償すべきだと言った。減収世帯に30万円、個人事業主や中小企業に対して100万円、200万円を給付するとしているが、条件が複雑で手間暇がかかる。いっそ一律1人当たり10万円を給付することにしませんか、と主張した。安倍首相は、前向きに考えることにする、と答えた(それが実現しそうである)。

 最後に、いま各国で他国との出入りを遮断するなど、反グローバル化、そして国民の生命と生活を守るために、ということで政府の権力強化の流れが強まっている。少なからぬ国民が政府を頼りにしている。石田勇治・東大大学院教授は、ヒトラー登場前夜のドイツと今の日本の相似点として、政治家の質的劣化と国会の体たらくを挙げている。その危険性を指摘する有識者は少なくない。だからこそ、そうならないために国民の一人ひとりが頑張らなくてはならない。

週刊朝日  2020年5月1日

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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