保坂展人区長は本誌の取材にこう語った。

「世田谷区は待機児童が日本一多くて大変だといわれる地域ですから、臨時休校で保護者が働けなくなるような状況は回避しようと考えました。BOPでの学童保育のほか、児童館や図書館はがんばって開けておくようにしました」

 そのうえで、政府に対してこう指摘する。

「自治体には子どもの健康と成長を支援し、学びを保障する役割があります。しかし、政府は一斉休校する判断に至った根拠を示さなかった。そうすると、学校再開を判断する目安がないことになります。自治体に丸投げで済む話ではありません」

 高齢者についても、デイケアなど高齢者施設を閉鎖すれば感染拡大は防げるのかもしれない。だが、高齢者のコミュニケーションの場や、食事を提供する場が失われると、フレイル(虚弱)や、うつなどの原因になりかねない。保坂氏は「ウイルスと戦いながら続ける必要がある」と話す。

「新型コロナとの戦いは、短期決戦で一気呵成(かせい)に鎮圧できるほど簡単ではないことが分かってきました。長期戦を強いられるなかで、リスクの最小化を図りながら、何を止めて何を稼働させるか。市民の尊厳ある生活を念頭に追求していくしかないと思っています」
(本誌・亀井洋志)

週刊朝日  2020年4月3日号に加筆