ただ、債務超過にならなければいいというものでもない。私たちのお金の信頼性を守る中央銀行の健全性が、株価下落で揺らぐのはあってはならないことだ。藤巻さんは、コロナショックは日銀の問題を表面化させるきっかけに過ぎないという。

「日銀は、本来買ってはいけない株や長期国債を大量に買っている。いわばアベノミクスの副作用で、“膿”がたまっている状態です。コロナショックが最後の一刺しとなって、あふれ出る恐れがある。これまで平時だったのに、財政出動や異次元の金融緩和をやり過ぎたんです。いざコロナショックが来た時に、切れるカードがもはやないのです」

 経済危機の時には適切な株価がつかないので、公的存在の日銀が株を買い支えるのは当然だという見方もある。日銀はお札(日銀にとって無利子の負債)を発行することができるので、いくらでも株を買うことができるという意見も根強い。株の評価損があっても、景気悪化で債券価格が上昇すれば債券の含み益が増えるので、全体の損失は抑えられるという声もある。

 藤巻氏は、いまのマイナス金利の状況では株価下落に見合うほど債券価格の上昇は見込めないと指摘。株を買い続けるのにも限界があり、このままでは日銀が日本一の株主になって、実質的に「社会主義国家」になってしまうと訴える。

「日本人は社会主義国家で良いと思っても、外国人投資家はリスクを厳しく評価する。日銀が債務超過になって倒産するかもしれないと判断すれば、外国人投資が一気に引く可能性がある。そうなれば日本は世界の金融市場から孤立しかねないのです」

 藤巻氏は3月18日に、『日本・破綻寸前 自分のお金はこうして守れ!』(幻冬舎)を出す。そのなかで、日本の財政や日銀が破綻する日(Xデー)は、いつ来てもおかしくないと主張している。

「私のことを過激論者だという人もいますが、日本経済の実態が悲惨な状態に陥ってしまったので、それを記述すると過激に聞こえてしまうだけだと思います。ここに至っては、Xデーの回避は不可能だと思います。私自身も非常に不安です。ただXデーが来たところで、日本自身が破綻するのではありません。破綻するのは財政であり日銀です。市場原理は偉大ですから4年ほど耐え忍べば、必ず復活します。重要なことは、耐え忍ぶべき時期のために、今から十分な用意をしておくこと。そして、二度と同じミスをしないために、失敗をきちんと記録し分析しておくことです」

 果たして、コロナショックの先行きはどうなるのか。経済不安をあおるわけではないが、現実を直視することが求められそうだ。(本誌・多田敏男)

※週刊朝日オンライン限定記事