「何となく感じていたのは、私のことを見てくださる人たちが、芝居をしている私と歌を歌っている私を別物のような意識で見ているのではないかということです。女優の仕事は役を演じることですが、歌の仕事には役名がない。つまり、もっと素の私に近い気持ちで私は歌に臨んでいるのではないかと思うのです。そんな等身大の“今の私”のままで皆さんの前に立って歌えたらなと思っています。女優の仕事はやりがいもあり、大好きなんです。でも今は違った世界観を提示できるような気がして。女優の仕事も歌も、表現者として普段の自分を投影するということに大きな差はないように思いますが、物語の中で役を生きる芝居の世界と違って、何より音楽を感じながらその時々のどんな自分でも重ねることができるという、また違った楽しさを感じています」

 ツアーで全国を回るのも楽しみだという。キャンディーズ時代にも地方を回ったが、スケジュールがいっぱいいっぱいで、地方公演ならではの楽しみを味わったことがなかった。

「当時は移動に次ぐ移動で、今自分たちはどこにいるのかわからなくなることもあったんです。大変失礼なことですが、たとえば四国でコンサートをしているのに、『広島の皆さ~ん!』って間違えてしまったこともあるくらい(笑)。そんな調子だったので、楽しんだり、味わったりということがなかったんです。今回のツアーではしっかり楽しみたいと思っています。地方に住んでいる知人もいるので、ぜひ会いたいし、コンサートも見てもらいたいですね」

 楽しみなコンサートツアーだが、気になることもある。準備やレッスンなどで仕事が忙しくなり、“主婦業”がおろそかになってしまいがちな点だ。

「つい家事を後回しにしてしまうことが多くて、家族には迷惑かけているんじゃないかとふとよぎります。洗濯機を回して、乾燥機に入れるのを忘れちゃったり、洗濯物をあんまりきちんと畳めなかったり(笑)。お料理も最近はつい“お鍋”ばっかり。でも、夫も娘も自分でできる人たちなので、できることはやってくださいって。おかげさまで協力してもらっています」

 ソロデビュー後、忙しい生活になってから始めた日課がある。アルバムやコンサートにコーラスで参加してくれた人に教わった呼吸法だ。メトロノームを使って、7秒吸った息を7秒で吐く、この秒数をだんだん短くしていき、最後は1秒で吸って吐く。この呼吸法をほぼ毎日、続けているという。

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