「去年の初コンサートで、お客さまの反応や表情、そして笑顔を目の当たりにして、本当にやってよかったと思いました。こんなに喜んでいただけるなら、私の今ある時間をささげてみようかなという気持ちになりました。見に来てくださった皆さんから昔のままの声援をいただき感動してしまって。皆さんが、それぞれの人生を生きてきたうえでの応援だったので、余計に感慨深くて、いろいろあったけど、今日は楽しくやろうよっていう雰囲気が伝わってきました」

 実は初ライブのとき、キャンディーズ時代の曲を歌うかどうかはギリギリまで決まらなかった。もともと3人で歌う前提の曲だったので、ソロとして披露するためには工夫が必要になる。

「曲によって私の歌うパートは上だったり下だったり真ん中だったりしたんです。それを調整して、メインのメロディーを私が歌う必要がありました。でもね、昔の記憶が染みついていて、つい昔のパートを歌ってしまったり。そのくせ、昔の振り付けがどうしても出てこなかったりする。体で動きを覚えていると思ったのに、むしろ体が動かない(笑)」

 アンコールツアーのリハーサルが始まったのは1月。歌う曲目も決まり、自宅でひたすら曲を聞きながら口ずさみ、歌詞を見直したりボイストレーニングなどのレッスンも続けてきた。「昔は自宅は休むところだったから、自宅でレッスンなんてありえなかった」という蘭さん。自宅ならではの出来事もあった。俳優で歌手の夫・水谷豊さんが「歌ってごらんなさい」と、自分の目の前で歌うように言ってきたという。

「もっと練習しなくていいのって言いながら、勝手にCDをかけ始めちゃうんです(笑)。仕方ないからCDに合わせて歌うと、“へぇ、座って歌うんだ”とか言われるんです。何度か歌っていると、“うん、声が出るようになったね”などなど、いろいろと励ましてくれました(笑)」

「普通の女の子に戻りたい」の流行語を残し、人気絶頂のままキャンディーズを解散した2年後の1980年、女優として芸能活動を再開。同年、映画「ヒポクラテスたち」でヒロインを演じ、ヨコハマ映画祭助演女優賞を受賞すると、映画・ドラマ・舞台と次々に出演していく。女優として確固たる地位を築いているのに、なぜ歌手として再デビューしようと考えたのか。

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