美輪:あの絵は私が一水会の木下孝則さん(洋画家)のモデルをやったときにくださったもので、それが3点ぐらいあります。同時に東郷青児さんからもモデルの話があったんですが、「木下さんに描いてもらってるから」と言ってお断りしたんです。

林:ほぉ~。ちょっと昭和の匂いもして素敵な絵です。

美輪:1956(昭和31)年でした。舞台で使ったものも置いてまして、例えばあの大きないすは、ジャン・コクトーの舞台「双頭の鷲」(68年初演)で私がエリザベート王妃を演じたときの小道具なんです。

林:まあ、そのときのいすですか!

美輪:壁に掛かっている私の写真は、フランスのル・モンド紙が1ページ掲載してくれたときの写真です。

林:美しいです。コンサートはいつごろ再開できそうですか。

美輪:去年12月にディナーショーをやるはずだったんですけど、ちょっと無理かなと思って、トークショーに切り替えさせてもらったんです。私の場合は、14センチのヒールをはいて、立ちっぱなしで2時間以上も歌ってしゃべってですからね。さすがに体力的にも無理じゃないかと思って。

林:お座りになって歌ってもいいんじゃないですか。そこに素敵ないすもあることですし……(笑)。それでもファンの方は大喜びだと思います。

美輪:ファンの方から励ましのお手紙をいただくと、やらなきゃいけないなと思うんですけど、もし倒れたりしたらまた迷惑をかけるし、主催者側もキャンセルされるのがコワいから、オファーも来なくなってますしね。

林:いやいや、そんな……。渋谷のパルコ劇場が新しくなりましたが、パルコは美輪さんの劇場という感じがしますので、パルコ劇場での美輪さんを早く見たいです。コンサートとお芝居とでは、どちらが大変なんですか。

美輪:どっちも大変ですね。お芝居といっても、私、出ずっぱりですからね。「双頭の鷲」のエリザベート王妃の役なんて、一幕は40分も一人で長ゼリフなんですよ。三幕では、重いドレスを着て、ハイヒールで14段の階段を上ったり下りたりしますでしょ。最後に相手役の人が真っ逆さまに階段を落ちていって、それを助けようとして、階段のいちばん上で後ろ向きのまま倒れて、上半身を階段にもたれたまま逆さまになって死ぬんです。

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