3番目に私が避けているのは電車です。原則として電車には乗らないようにしてから20年になります。その理由は痴漢に間違えられたら、かなわないからです(笑)。60歳を過ぎてからの方が女性の色気を愛するようになったので、万が一にでも、電車のなかで女性に触れてしまったら大変です(笑)。

 また3年ほど前からは、嫌いなものは食べないということを徹底するようになりました。

 会席料理や中華料理のコースでは、好きでないものも出てきます。しかしそれを食べないのでは、もったいない上に作ってくれた人に失礼な気がして、目をつぶって少しは口にするようにしていたのです。

 でも、それもすっぱりやめました。私の食養生の基本である「好きなものを少し食べる」ということを貫くようにしたのです。そうしたら、体重が減って身が軽くなりました。さらに晩酌の味わいが増したので、うれしい限りです。

 テレビを見ない。スマホを持たない。電車にも乗らない。嫌いなものは食べない。

 こうしたことを励行するだけで、日常がずいぶんシンプルになります。まさに「老子」の、「之を損し又た損して、以て無為に至る。無為にして為さざる無し」(第四十八章)です。

 これによって、ナイス・エイジングの質が高まるのは間違いありません。

週刊朝日  2020年1月17日号

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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