助監督(製作主任)としてついた山本監督作では、31号の「馬」のほか、「綴方教室」が52号、「孫悟空(前・後編)」(40年)が53号、「ロッパの新婚旅行」(同年)が55号、「藤十郎の恋」が59号に予定されている。また初めて脚本を手がけた伏水修監督「青春の気流」(42年)が51号、成瀬巳喜男監督の助監督を務めた「雪崩」(37年)が54号と、いずれも初DVD化の作品が並ぶ。すでに刊行されている中では、木下惠介監督「肖像」(48年)、マキノ雅弘監督「殺陣師段平」(50年)、稲垣浩監督「戦国無頼」(52年)など、脚本家として意外とも思える監督と組んだ作品群が興味深い。

「監修といっても私は名前だけですけどね」と謙遜する野上さんだが、できれば黒澤監督が存命中に出したかったと残念がる。「『馬』にしても、黒澤さんが見たらさぞ喜んだと思いますよ。これまでなかなか見られなかった作品もずいぶんありますし、多くの人に見てもらいたいですね」と期待を寄せる。

「海外に行くと、黒澤さんの話を聞きたいという人が、それこそ群がるくらい来ます。『馬』のときからそうですが、黒澤さんの映画の表現力は群を抜いてうまかった。映画の面白さをこれだけ満喫させるような監督は、外国でもそうはいませんよね。もう映画の時代も終わったから、これからも出ないでしょう、きっと」と、亡き盟友の偉業をたたえていた。(ライター・藤井克郎)

週刊朝日  2020年1月3‐10日合併号