“盟友”が振り返る黒澤明「彼にとって編集は極楽の楽しみ」 (2/3) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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“盟友”が振り返る黒澤明「彼にとって編集は極楽の楽しみ」

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藤井克郎週刊朝日
インタビューに答える野上照代さん (撮影/写真部・掛祥葉子)

インタビューに答える野上照代さん (撮影/写真部・掛祥葉子)

黒澤明監督 (c)朝日新聞社

黒澤明監督 (c)朝日新聞社

「黒澤さんにとってはやっと演出ができるっていうんで、編集は極楽の楽しみなんですよ。私なんか材料をそろえるだけで、邪魔しているようなものです。とにかく編集は世界一速いし、うまかった。それはヤマカジさんから任されていたからなんでしょうね」

「ヤマカジさん」というのは、黒澤監督が助監督時代に師事した山本嘉次郎監督(1902~74)のことだ。36年に東宝の前身のP・C・Lに入社した黒澤監督は、「藤十郎の恋」「綴方教室」(ともに38年)などの作品で山本監督につく。チーフ助監督を務めた「馬」(41年)では、ほぼすべての撮影、編集を任されていたという。

「よく言っていましたよ。ヤマカジさんは『じゃ、頼むね』と言って帰っちゃうんだよって。でもまだ20代のころですからね。奥行きのあるキャメラワークなんて黒澤さんの好きなアングルなんだけど、あのころから研究していたんだなと思うと、大したもんですよ」

「馬」は東北の農村を舞台に、少女が子馬を軍馬に育て上げるまでを四季折々の風景の中で描く大作だ。主役の少女を演じた高峰秀子(1924~2010)が当時、黒澤助監督に気があって、ロケバスでもスタッフルームでもいつも黒澤さんのひざの上にちょこんと座ってきたという話も、何度か本人から聞いたことがある。

「編集室でお茶を飲みながら、よく昔話をしてくれました。『馬』のときはほかに、子馬が連れていかれて母馬が捜し回る場面で、ただ走っている映像をつないだら、ヤマカジさんに『黒澤くん、ここはもののあわれだよ』と言われて、編集をやり直したとも話していましたね。ホント、黒澤さんはヤマカジさんと出会って幸運でしたよ。会っていなかったらあんなに伸びなかったでしょう」

 そんな野上さんが監修を務めているのが、隔週で発行している「黒澤明DVDコレクション」(朝日新聞出版)だ。映画のDVDと解説小冊子からなり、すでに黒澤監督作の全30作品は刊行済み。31号からは「馬」をはじめ、助監督や脚本で黒澤監督が関わった作品がラインアップされており、黒澤作品の原点に触れる貴重な機会となっている。12月末までに52タイトルが発売されている。


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