第二部は「村上春樹と『翻訳』」と題されたパネルディスカッションだった。アメリカ文学研究者の柴田元幸さんを司会に、作家の川上未映子さん、UCLA准教授マイケル・エメリックさん、早大准教授で作家・翻訳家の辛島デイヴィッドさんが登壇した。春樹さんとの対談集『みみずくは黄昏に飛びたつ』(新潮文庫)を出したばかりの川上さんは春樹さんの文章を朗読し、文章技術、情景描写、情報のまとめ方、10代の自意識、不安、時代の描き方が素晴らしく、省略と堆積がせめぎ合いながら大きな終焉に向かっていく村上作品は「誰も真似のできない最大のレベルにある」と語った。「僕は村上世代に帰属しています」と言うエメリックさんは、50の言語で翻訳されている村上作品について、インドネシアではセックスシーンがない『ノルウェイの森』が読まれていることを例に、「いろんな世界でそれぞれ全く違う読み方で読まれている。みんな違うのに村上春樹の文学。それが強さであり、素晴らしいところだ」と話した。「世界文学をどんな風に定義しようとも、村上春樹さんは世界文学です」

 の話に戻ろう。獣医の知り合いによると、猫はいたずらを仕掛けたり、人によって態度を変えるのだそうだ。春樹さんの番組『村上RADIO』には日々リスナーからメールが来るが、先日はこんな質問が。「1日だけ猫になれるとしたら、何猫になって、何をしたいですか?」。さて、この答えは? それは今月の15日夜7時からの「村上RADIO~冬の炉端で村上SONGS~」で!

週刊朝日  2019年12月13日号

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延江浩

延江浩

延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー、作家。小説現代新人賞、アジア太平洋放送連合賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞、放送文化基金最優秀賞、毎日芸術賞など受賞。新刊「J」(幻冬舎)が好評発売中

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