並ぶメガバンクの看板。各銀行とも店舗や人員の合理化に取り組む=東京都江東区、撮影・多田敏男
並ぶメガバンクの看板。各銀行とも店舗や人員の合理化に取り組む=東京都江東区、撮影・多田敏男
メガバンクの主な人員や店舗の削減案  (週刊朝日2019年12月6日号より)
メガバンクの主な人員や店舗の削減案  (週刊朝日2019年12月6日号より)
銀行難民にならないための10カ条  (週刊朝日2019年12月6日号より)
銀行難民にならないための10カ条  (週刊朝日2019年12月6日号より)

 2兆2131億円と純利益が前年度比27.1%減の銀行業界。苦しい経営に手数料の値上げや口座維持手数料の導入など、利用者への負担が強いられてきている。それでも、預けられる人はまだましかもしれない。銀行の店舗が消え、窓口での取引は難しくなる。しわ寄せを受けるのはネットを使えない高齢者。“銀行難民”が続出し、お金が行き場を失うのだ。

【銀行難民にならないための10カ条はこちら】

 ある大手地銀の幹部はこう漏らす。

「地方では成長が見込める企業は少なく、融資したくても借りてくれるところがありません。オーバーバンキングも限界で、これから本格的に地銀の淘汰(とうた)が始まります。預金を積極的に集める時代は終わり、いかにコストを削減するかが問われます」

 メガバンクも地銀も、生き残りのためにコスト削減に必死なのだ。店舗や人員をできるだけ減らす、「大リストラの嵐」が吹き始めている。

 もうからない店舗は閉鎖され、残ったところも従来の窓口業務は縮小される方向だ。自社の企業年金を減額するなど、待遇を見直す動きもある。

 地銀は業務の効率化がメガバンクより遅れていたところもあり、さらに厳しい。

 奈良県が地盤の南都銀行は、県内外に137ある全営業拠点のうち30店舗を再編すると11月8日に発表した。対象となるのは店舗密集地や過疎地域。

 密集地では閉じても、ほかの店舗を利用しやすい。だが、過疎地域ではそうもいかない。例えば黒滝支店(奈良県黒滝村)は、10キロ近く離れた大淀支店(同県大淀町)内に移転する。

 南都銀行は過疎地の顧客に配慮するため、日本郵便と連携。郵便局にATMを置いたり、共同窓口を設けて一部の手続きができるようにしたりするという。

 ほかの地銀でも店舗の統廃合は加速している。ピーク時から2~3割を減らしたところも目立つ。窓口を利用したい人にとっては、サービス低下は否めない。地方では一番近い銀行まで車で数十分かかるケースも珍しくない。「年を取って運転できなくなったらどうすればいいのか」といった不安を感じる高齢者もたくさんいる。

 危機感を抱いた自治体の首長が苦言を呈した事例もある。鳥取県日南町の町長だった増原聡さん(故人)は昨年、鳥取銀行が町内の生山支店の閉鎖を通告したのを受けて、銀行側に次のように訴えた。

「県内の隅々まで支店を置けとは言わない。でも、隅々まで目を配るのが地銀の役割でしょう」

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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