安倍首相によれば、旅費、宿泊費は各参加者が旅行会社に支払った。夕食会の費用は会場入り口の受付で、事務所職員が1人5千円を集金し、ホテル名義の領収書をその場で手交した。受け付け終了後に、集金したすべての現金をその場でホテル側に渡すという形で、参加者からホテル側への支払いがなされた。収支が発生した場合には、収支報告書に記載義務が生じるが、収支が発生していないので記載しなかったのだという。

 また、招待者の大多数がホテルの宿泊者で、毎年使っているという事情があって、ホテル側が価格を安くしたのだろう、とも説明した。

 野党はホテル側に明細書の提出を求めているが、ホテル側は「お客様のプライバシーに関わるので」という理由で提出を拒んでいるようだ。

 安倍首相は20日の参院本会議で、招待者選定について「私の事務所が内閣官房の推薦依頼を受け、参加希望者を募ってきた。私自身も事務所から相談を受ければ意見を言うこともあった」と、自らの関与を認めた。8日には「私は招待者の取りまとめ等には関与していない」と説明したのを修正したのである。

 しかも、招待者の選定には、昭恵夫人も関わっていたことが判明した。

 こうなると、明らかに税金の私物化だが、19日に朝日新聞が報じた世論調査では、安倍内閣の支持率は前回の45%から44%へと、1ポイントしか落ちていない。これはどのように捉えればいいのだろうか。

週刊朝日  2019年12月6日号

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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