名古屋市交通局のHP
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 名古屋市の女性が、二人用のベビーカーに双子を乗せて市バスに乗ろうとして運転手から拒否されたというSNSを発信した。「多胎児増加時代」にあって波紋を呼んでいる。

 10月下旬、名古屋市北区で並列型のベビーカーに双子を乗せたままバスに乗ろうとした34歳の女性が、運転士から「ベビーカーを中まで運べますか」と聞かれた。女性はバスに付いている車いす用のスロープを使うことを求めたが運転手は返事をしなかった。あきらめて目的地の区役所まで約40分を歩いたという。

 名古屋市交通局は11月7日から運転士の対応に問題がなかったかを調査し、女性が乗ったと思われる路線の運行を調べたが、バスも運転士も特定できずに調査を終えた。乗客と運転士のやり取りを録音したレコーダーも調査前にデータが更新され、その後、女性が訴えて来たわけでもなく難しかったようだ。

 同局は「200人近くから聞いたが確認できなかった。女性が不快な思いをしたのなら申し訳ない。運転士にはこうした場合の対応をしっかり周知させたい」(自動車運転課)とする。

 この間、同局は市民の問い合わせに「双子用のベビーカーはたたまないと乗れない」と誤った回答をしたことも判明したが、この女性だった可能性が高い。

 同局では原則、大型バスの場合、車椅子のスペースが空いていれば通路は確保できるのでベビーカーに子供を乗せたまま乗車できる。混雑時は折り畳んでもらうことを求めている。中・小型バスではベビーカーから子どもを降ろして畳んで乗るように求めている。乗降の際は乗務員が手伝う、とする。

 多胎児家庭を支援する認定NPO法人「フローレンス」(東京都千代田区)は7日、多胎児育ての社会的困難について都内で記者会見した。名古屋の問題を受けてではなかったが「バスの乗車拒否を経験した人もいた」などとするアンケート結果も発表し、改善を訴えた。アンケートでは「一人でバスに乗ることは難しい」という声が多く、バスの乗車時にベビーカーを畳むことが求められると「荷物と子ども2人とベビーカー全部を抱えることはできない」「ベビーカーを畳む間の子どもたちが心配」などの意見が寄せられていた。

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自治体によって異なる対応