近年、不妊治療や体外受精の影響で双子や三つ子などが、半世紀前の倍ほどに増えている。妊婦の百人に一人が多胎児の母親だという。とはいえ、今回、女性に好意的な声ばかりではない。ネットなどではベビーカーを狭いバスに持ち込むことに批判の声も見受けられる。フローレンスでは「双子用ベビーカーでも車椅子とほとんど大きさは変らない。誰にとっても利用しやすい公共交通機関になれば…」(広報課)と当惑している。

 フローレンスでは双子用のベビーカーをたたまなくてもバスに乗れるようにすることや、タクシー利用の補助などを行政に求めているが、自治体によって対応が違う。都営バスは車内で転回できない双子用など大型のベビーカーは畳むことを求め、畳めないものは乗車を拒否している。大阪シティバスでは双子用と一人用を区別していないが混雑時は畳んでもらい、運転士は求められれば手伝うとしている。また、地方ではバリアフリーの大型バスの普及が遅れているなど地域差がある。

 昔の乳母車は箱型で重く、バスに持ち込むことなど考えられなかった。折り畳み式になり、軽量化したことや、車いすを乗せるためのバリアフリーのバスが増えたことで変化した。少子化でも逆に多胎児は増えたことで、ベビーカーのバス乗車の問題が顕在化したようだ。ここはしゃくし定規な規則を作るのではなく、混み具合などに応じて運転士と乗客が臨機応変に対応するのが一番ではないか。

(ジャーナリスト・粟野仁雄)

*週刊朝日オンライン限定記事