10月のタジキスタン戦で、攻め上がる日本代表の久保建英(右) (c)朝日新聞社
10月のタジキスタン戦で、攻め上がる日本代表の久保建英(右) (c)朝日新聞社
9歳のころの久保建英 (c)朝日新聞社
9歳のころの久保建英 (c)朝日新聞社

 2020年東京五輪で活躍が期待される選手を紹介する連載「2020の肖像」。第7回はサッカー男子日本代表・MF久保建英(18)。2020年東京五輪で1968年メキシコ五輪の銅以来、52年ぶりとなるメダル獲得をめざすサッカー男子で期待を背負う。今後の欧州での活躍次第で、逆に五輪出場に黄信号がともる可能性も。出場の可否を含め、日本の命運を握っている。朝日新聞社スポーツ部・勝見壮史氏が久保の規格外の才能を解説する。

【写真】9歳のころの久保建英選手

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 久保のすごさは、ピッチ脇で試合の写真を撮影してみれば、すぐに分かる。他の選手に比べ、顔が上がっている写真が圧倒的に多い。ドリブルしているときでさえ、ほとんどボールを見ていない。

「戦っている相手からしたら、最悪のプレーをする」

 日本代表のDF長友佑都(33)は、久保のことをそう評する。長く欧州でプレーするベテランに、

「久しぶりに化け物が出てきた」

 と言わしめる。

「ドリブル一辺倒の選手なら読みやすいが、彼みたいな選手はやっかい。パスをさせないようにしたら、ドリブルで持っていかれる。引き出しが多すぎて、何をするか分からない。ドラえもんみたい」

 才能の一端は、日本代表のデビュー戦となった6月の親善試合・エルサルバドル戦(ひとめぼれスタジアム宮城)でも見せた。後半に途中出場した久保は右サイドを抜け出すと、後ろから駆けてきた2人の相手に追いつかれ、前方と斜め後方をふさぐように囲まれた。

 ここからが真骨頂だ。顔を下げずにドリブルを続ける。横目で相手を確認し、縦から横にきゅっと方向を変え、2人の間をすり抜けた。

「するっといい感じで抜けた」

 相手を置き去りにして、得意の左足でシュート。ゴールは決まらなかったが、鮮烈な印象を残した。

 相手の状況を見て、瞬時にプレーを変えられる。久保に関わってきた指導者たちが、こぞって口にする能力だ。

 久保は話をするとき、

「ファーストチョイス」

 という言葉を使うことがある。自分が好きなプレーにこだわるのではなく、そのときに適したプレーを選ぶ、というのだ。

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