北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表
北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表
イラスト/田房永子
イラスト/田房永子

 作家・北原みのり氏の週刊朝日連載「ニッポンスッポンポンNEO」。今回は生理について。

【この記事のイラストはこちら】

*  *  *

「タンポンって何ですか」

 20歳の大学生に尋ねられ、私は文字通り絶句した。話がかみ合わないなとは思っていた。「今、一番オススメは月経カップ。これでタンポンすら不要!」と最新の生理用品事情を語っていたのだが、彼女が全く反応せず、それどころか怪訝(けげん)な顔を向けるのだ。そこで「もしかしてタンポンは使わない?」と尋ねたときの、まさかの質問返しだった。

 タンポンッテナンデスカ。心の中で棒読みで復唱する。その場にいた私の友人(50代)も、あっけにとられていた。そして私たちは、地の底から這(は)うような太い声で彼女に尋ねたのだった。

「タンポン、知らないの」

 私たちの驚きように彼女がおびえるのがわかった。

「も、もしかしたら私が無知なだけかも。それはどこで売ってるのですか?」

 タンポンを売らないコンビニが増えているという。「でもタンポンないと泳げないよね?」と食い下がると彼女は「生理のときに泳ぐ?」と全身で固まるのだった。彼女の話では、水泳の授業と生理が重なると休むしかなく、そのため体育の単位を落とす女子が必ずいるとのこと。東京都生まれの20歳の現実だ。

 あまりのことに驚き、すぐに会社の20代スタッフ3人に「タンポン知ってる?」と聞くと、皆「知ってるけど使わない」と言うのだった。しかも「生理を理由に体育を休むと、証拠見せろと言われ、血のついたナプキンを見せる学校があるというのをSNSで見た」という情報まで教えてもらい、私は石になった。

 たぶん、昔の人のほうが、膣(ちつ)に綿を入れている。そもそも80年代のほうがタンポンの種類があったが、次第に縮小し、今やタンポンは生理用品市場の2%程度と言われている。テレビCMもないかもしれない。

 それにしても、生理のときに何かを諦めることが前提だなんて、あまりに不自由じゃないか。どうして大人が教えてあげないのか。

著者プロフィールを見る
北原みのり

北原みのり

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

北原みのりの記事一覧はこちら
次のページ