「未支給年金はあくまで生計を同じくしていた遺族のものであり、遺産分割の対象にはなりません」

 配偶者がいる場合は全額を受け取ることができ、それを子など他の相続人に分ける必要はないのだ。

 日本年金機構にマイナンバーが収録されている場合、市区町村役場に死亡届を出せば年金情報に反映されるが、登録がない場合は年金事務所にも死亡届を出す必要がある。この間に発生するタイムラグで、まれに本来受け取る資格のない年金が故人の口座に振り込まれてしまうこともある。後から返還請求されて面倒なので、年金事務所にも死亡届は出しておくと安心だ。

■遺族年金(中高齢寡婦加算、寡婦年金、死亡一時金)
一家の大黒柱を失うと年金ないし一時金で支給

「遺族基礎年金」は、国民年金や厚生年金の加入者が亡くなった場合に、子供のいる配偶者、もしくは子供に支給される。対象は「18歳になってから最初の3月31日を迎えていない子供」か、「20歳未満で障害年金の障害等級1級か2級の子供」がいる場合に限られる。

 基本額は、年間78万100円で、子供1人につき22万4500円ずつ増える。ただし、子供が3人以上ならば3人目以降は7万4800円に。「女性が子供を連れて再婚して再婚相手が亡くなった場合は、夫が子供と養子縁組していないと遺族基礎年金は支給されない」(ファイナンシャルプランナーの井戸美枝氏)

「遺族厚生年金」は、厚生年金に加入している人が亡くなった場合に、遺族基礎年金とは別に支給される。対象は「死亡した人によって生計を維持されていた人」に限られ、優先順位は配偶者と子供、父母、孫、祖父母の順。退職して厚生年金の被保険者を外れていた場合でも、受給できる。妻以外は年齢の要件もある。

病気やケガで亡くなった場合は、その病気やケガの初診日に厚生年金の被保険者で、初診日から5年以内に亡くなると支給対象になる。また、厚生年金の加入期間が25年以上の場合や1級・2級の障害厚生年金を受給していた場合も、残された家族には遺族厚生年金が支給される」(同)

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