山藤章二さん(C)朝日新聞社
山藤章二さん(C)朝日新聞社

 イラストレーターの和田誠さん(享年83)の訃報を受けて、同時代に活躍してきた山藤章二さん(82)に追悼の原稿を寄せてもらった。
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 すぐ目の前を和田誠の操る馬がゆく。二着馬の私からみればすぐ目の前なのにその差は縮まらない。「くそっ、何回おなじ目にあわせるんだ!」と前の馬からとんで来た泥をかぶりながら口惜しい思いをしたものだ。いつもやる仕事を見ていると<キレイゴトの和田>に対して、<キタナゴトの山藤>で行くか、と、自然に自分の居場所も決まって行った。そういう意味で彼の存在は私にとっての恩人でもある。

 一九五七年の「日宣美賞」で彼は大賞を、私は特選を受けてデビューした。同い年である。

 以後彼はライトパブリシティというデザイン界の名門である会社に入り、私はもっと実質的な広告制作会社に入って覇を競った。

 お互いに思うことはいろいろあるだろうから腹を割って対談をしたかったが、適わぬことになった。でも、彼の華やかでキレイゴトのデザインやイラストは私にとっては「アンチとしてのライバル」であり、貴重な友人であった。

 スタートもゴールもほぼ同時代の戦友だった。

※週刊朝日オンライン限定記事