キャッシュレス決済によるポイント還元制度をPRするタレントの西野七瀬さん(撮影・多田敏男)
キャッシュレス決済によるポイント還元制度をPRするタレントの西野七瀬さん(撮影・多田敏男)
ここがヘンだよ消費増税 (週刊朝日2019年10月18日号より)
ここがヘンだよ消費増税 (週刊朝日2019年10月18日号より)
増税に合わせた政府のバラマキ対策 (週刊朝日2019年10月18日号より)
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まとめ買いは損? 買う個数で支払額が増えるケースも (週刊朝日2019年10月18日号より)
まとめ買いは損? 買う個数で支払額が増えるケースも (週刊朝日2019年10月18日号より)

「少しでも節約したいので増税に合わせたキャンペーン情報はチェックしています。でも、今回はいろいろ面倒でしょう? 息子に聞いてもわかりにくくて」

【軽減税率、ポイント還元…ここがヘンだよ!消費増税】

 増税後に吉野家有楽町店(東京都千代田区)を訪れた70代の女性は、こう漏らした。吉野家は10月15日まで牛丼などを10%割り引くキャンペーンをしているが、気がかりなのは終了後だという。

「年金だけでは生活できないので、清掃作業員のアルバイトをして、食費や生活費も節約しています。勤務先に近いのでこの店にはよく通っていますが、キャンペーン終了後の値上がりが心配です」

 政府はこれまでの増税で景気が低迷した反省もあって、今回は飲食品などを8%に据え置く軽減税率を入れた。さらに増収分を上回る2兆円規模の予算を用意。ポイント還元制度や年金生活者支援給付金などの“バラマキ対策”も実施する。

 軽減税率は同じ食品でも、店内で食べると10%で持ち帰ると8%。消費者にとっては納得しにくい仕組みになっている。そこにポイント還元制度も加わり、70代の女性のように消費者は混乱している。吉野家はポイント還元制度に当初参加を検討したが、システム改修などが間に合わず、結局、全店で利用できないことになった。キャンペーンが終われば、女性は店内で食べると2%の増税分が直撃する。少しでも節約するには、持ち帰りにしてどこか別の場所で食べることになる。

 消費者にとってわかりにくい点はまだまだある。

 代表的なのが栄養ドリンクだ。医薬部外品は軽減税率の対象外のため、リポビタンDなどは10%。オロナミンCなどは清涼飲料水といった扱いになるので8%。小売店の栄養ドリンクコーナーでは、8%と10%の商品が混在して置かれている。税額の差は数円とはいえ、消費者にとっては納得しにくい。

 お酒も増税対象のため、アルコール度数が高い「本みりん」は10%。それに対し、アルコール度数が1度未満の「みりん風調味料」は8%だ。

 水もミネラルウォーターは8%で、水道料金は10%。国税庁によれば、水道水は洗濯やお風呂などにも使われるからだという。

 新聞も宅配なら8%だが、駅やコンビニで買う場合やデジタル版は10%となる。

 こうした線引きは国税庁が資料をもとに細かく解説しているが、消費者からすれば「屁理屈(へりくつ)」に思えてくる。

 ポイント還元制度はさらにややこしい。

 中小の小売店や飲食店なら5%分、コンビニや飲食チェーンなどフランチャイズ店なら2%分が戻ってくる。お得なように見えるが9カ月間の期間限定。建前上はキャッシュレス決済を促進し、中小企業などを支援する目的だが、効果ははっきりしない。本当の狙いは、消費者の不満を一定期間だけ抑えるところにありそうだ。

 しかもこの制度を利用するには、店が経済産業省に申請して登録されていなければならない。登録作業は遅れ気味で10月1日に間に合ったのは約50万店。約23万店はまだ作業中だった。そもそも制度の対象となりうる店は約200万~300万はあるとされ、登録できているのは一部にとどまる。

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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