建設が進む新国立競技場=6月25日 (c)朝日新聞社
建設が進む新国立競技場=6月25日 (c)朝日新聞社
廃炉作業が続く東京電力福島第一原発。海側に並ぶ1~4号機の建屋の地下に高濃度汚染水がたまっている=2019年2月17日 (c)朝日新聞社
廃炉作業が続く東京電力福島第一原発。海側に並ぶ1~4号機の建屋の地下に高濃度汚染水がたまっている=2019年2月17日 (c)朝日新聞社

 2020年の東京五輪・パラリンピックで「不都合な真実」が次々と露呈している。突貫工事で「ブラック労働」の疑いが浮上し、「復興五輪」には疑問の声がやまない。あと1年で解決なるか。

【写真】廃炉作業が続く東京電力福島第一原発

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 猛暑は、選手やスタッフ、観客だけの問題ではない。

「(建設)現場は、暑さ対策を含む統一的な安全対策が講じられていません」

 国際人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」の事務局長、伊藤和子弁護士はそう指摘する。

 同NGOは9月2日、調査報告書「猛暑のオリンピック建設現場 灼熱(しゃくねつ)の過酷な労働環境」を公表し、大会関連施設の建設現場での労働環境改善を求めている。

 伊藤弁護士によると、同NGOはモニタリングチームを組み、7~8月に計6回現地調査をした。8月2日には有明、晴海両地区を調査。午前10時の時点で、すでに気温は32度、湿度は75%、体感温度は43度に達していた。体感温度が45度を超えた場所もあったという。

「複数の零細企業の作業員が集い、それぞれの労働条件の下で働いています。中にファン(扇風機)がついたジャケットをまとっている人もいれば、それがない人もいる。自分の身は自分で守るしかない。そんな印象を受けました」

 労働環境については、これまでも問題視されてきた。17年、新国立競技場の建設工事に携わっていた建設会社の男性社員(当時23)が自殺。極度の長時間労働による精神疾患が原因として労災が認定された。

 今年8月には、大会のメインプレスセンターと国際放送センターになる東京ビッグサイトの建設現場で男性作業員(50)が倒れた状態で発見され、搬送先の病院で死亡が確認された。熱中症によるものと見られている。

 労働環境が改善されない理由として、伊藤弁護士は現場が声を上げにくいからだとみる。「下請け切り」で職を失うことへの恐れがあるのではないかという。

「熱中症(と見られる症状)で男性作業員が死亡した後には、同じような境遇の作業員たちがツイッターで胸の内を明かしています。みな、命を削るように仕事をしています」

 16年から東京大会の労働環境について調査をしている、労働組合の国際組織「国際建設林業労働組合連盟」(BWI、本部・ジュネーブ)は5月、改善を求める報告書を組織委と東京都、日本スポーツ振興センター(JSC)に送った。

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