林:テレビで見ましたけど、商品を棚に運んでる最中に奪い合ってました、お客さんが。

澤田:びっくりしました。あんなに当たるとは思わなかったですから。柳井さんと開店日に原宿店に行って、行列ができているのを見た瞬間、「どうだ!」と胸を張りたかったんですけど、柳井さんは「在庫が切れるぞ」とか「人が足りないから補充しろ」とか言い始めるんです。

林:「よくやった」とか言わないんですか。

澤田:一言もなかったです(笑)。もう次を考えてるんです。本当にすごいと思いました。

林:でも、柳井さんが澤田さんに「次の社長、頼むぞ」と言ったら、澤田さん、それを断ったという有名な話がありますね。

澤田:ユニクロに入って2年目に副社長にしてもらい、「次はおまえしかいないからな」って言われたんです。当時40歳そこそこですよ。4年目に「そろそろ社長をやれ」と言ってくださったんです。だけど、僕はしっくりこなくて。

林:それはどうしてですか。

澤田:柳井さんの下で社長をやることにどういう意味があるのかなと思ったんです。社長っていろんなことを決めなきゃいけないでしょう。決められない社長って係長と一緒じゃないですか。

林:会長として柳井さんが指揮されてるわけですもんね。それでユニクロをやめて、代わりに親友の玉塚さん(元一・現デジタルハーツホールディングス社長CEO)が社長になったんですね。

澤田:そうです。僕が伊藤忠にいたとき、彼は取引先の旭硝子(現AGC)さんにいたんです。彼が大学を卒業した翌年から仕事で出会い、35年ぐらいのつき合いです。親友ですね。

林:玉塚さんは慶応でラグビーやって、澤田さんは上智大学でアメフトをやっていたから、気が合ったんでしょうね。

澤田:彼はその後、日本IBMさんに行ってコンサルタントとして、ユニクロにも提案に来たんですよ。「澤田さんにロジスティクス(原料調達から生産、販売までの物流管理)について提案したい」と。だけど、よくわかんない提案だったんで、「おまえ、ほんとは何になりたいんだ」って聞いたら、「経営者になりたい」って言うから、「ここに来て柳井さんから学んだらどうだ」と言って、11月28日の原宿店のオープンのときに、柳井さんに紹介したんです。

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