竹内まりや(たけうち・まりや)/1978年に「戻っておいで・私の時間」でデビュー。「SEPTEMBER」「不思議なピーチパイ」などがヒット。結婚後は作家として「元気を出して」「駅」などをほかのアーティストに提供。自らもシンガー・ソングライターとして活動。
竹内まりや(たけうち・まりや)/1978年に「戻っておいで・私の時間」でデビュー。「SEPTEMBER」「不思議なピーチパイ」などがヒット。結婚後は作家として「元気を出して」「駅」などをほかのアーティストに提供。自らもシンガー・ソングライターとして活動。
9月4日発売のデビュー40周年記念アルバム「Turntable」
9月4日発売のデビュー40周年記念アルバム「Turntable」

 シンガー・ソングライターとしてデビューし、40周年を迎えた竹内まりや。山下達郎と結婚後、河合奈保子、岡田有希子、松田聖子、中森明菜、薬師丸ひろ子、広末涼子アイドルに楽曲提供し、数々の名作を生み出した。山下達郎とのコラボ、曲づくりの秘密を語ってくれた。

【写真】デビュー40周年記念アルバム「Turntable」のジャケットはこちら

 マイクと向き合うと「私は歌い手である」ということを、竹内まりやははっきりと自覚する。メロディができ、イントロや間奏や各セクションの楽器の音が鳴り、書き上がった歌詞を歌うとき、この上ない幸せを感じる。

「長く緻密な作業の末に行う歌入れは、音楽制作上のクライマックス。私はスタジオでマイクの前に立つ瞬間が一番好き。そのワクワク感があるから、40年歌い続けてこられました」

 そんな竹内が9月4日にリリースする、デビュー40周年記念3枚組アルバム『Turntable』がユニークだ。全62曲を収録している。1枚目は、過去のベスト盤未収録のモア・ベスト曲集「More Expressions」。2枚目は、ほかのアーティストに書いた曲のセルフカバーや自身の曲の別テイクなどで構成された「Mariya’s Rarities」。3枚目は、洋楽のカバー集「Premium Covers」。

「2008年の3枚組のベスト盤『Expressions』に入れたくても入らなかった曲があって、未発表のレアトラックも含めたアルバムをつくりたいという思いもずっとあり、達郎(夫・山下達郎)のラジオ番組『サンデー・ソングブック』でオンエアしてもらった洋楽のカバーのストックも増えたので、今回の3枚組が実現しました」

 1枚目のディスク「More Expressions」には、竹内の過去のベスト盤に収録されていないことが不思議に感じられる人気曲も多い。

「比較的新しい『静かな伝説(レジェンド)』や『いのちの歌』を加えているので、そのあたりが“More”の選曲でしょうか。曲はオリジナルアルバム11枚のすべてから年代順に選びました。私の足跡をたどりながら、聴いていただける並びになっています」

 2枚目のディスク「Mariya’s Rarities」には、竹内がソングライターとして松田聖子や中森明菜などに提供した曲のセルフカバーも多くて楽しい。

「結婚し子育てをしていたころに、ほかのシンガーのかたへの作品を積極的に書き始めました。音楽は続けていきたい。でも、子どもの成長を近くで見ていきたい。家事もやりたい。じゃあ、どうすればいい? 自分に問いかけた結果、子どもが眠った夜の時間帯に曲や歌詞をつくろうと。昼は母親業、夜中は作曲業という生活が私には合っていました。深夜、赤ちゃんのよだれのあとが付いたトレーナーを着て、ぼさぼさの髪のまま曲を書き、現実ばなれした歌詞を書く自分を楽しんでいたように思います」

著者プロフィールを見る
神舘和典

神舘和典

1962年東京生まれ。音楽ライター。ジャズ、ロック、Jポップからクラシックまでクラシックまで膨大な数のアーティストをインタビューしてきた。『新書で入門ジャズの鉄板50枚+α』『音楽ライターが、書けなかった話』(以上新潮新書)『25人の偉大なるジャズメンが語る名盤・名言・名演奏』(幻冬舎新書)など著書多数。「文春トークライヴ」(文藝春秋)をはじめ音楽イベントのMCも行う。

神舘和典の記事一覧はこちら
次のページ
牧瀬里穂、広末涼子 レコーディング秘話