「父が元プロ野球選手だった影響で、小さい頃から野球はやっていましたが、自分はプロにはなれないと諦めたとき、ドラマを家族で観ていたのもあり、俳優になってたくさんの人の心を動かせたら、父にも喜んでもらえるかもしれない。そう思ったことが俳優を目指したきっかけの一つです」

 その父親は、山田さんが出演した映画があると、必ず映画館まで足を運んでくれるという。

「でも、だいたい『まだまだだ』って言われます(笑)。『お前がいい演技をしたわけじゃなく、はまり役だっただけだから。とにかく、周囲に感謝だぞ』って。僕も、今年で俳優になって約10年経ちますが、エキストラばっかりやっている時代もあったし、舞台のセットを組み立てたり、チケットのもぎりのアルバイトなんかもしていました。だから、今の状況がどれだけありがたいかは、わかっているつもりです」

 毎日が、勉強や観察によるインプットと、芝居でのアウトプットの繰り返しだ。でも、「全然疲れないし、苦ではないです。役の気持ちを考える、役の一生を考えるのが僕らの仕事なので」と爽やかに言い放つ。

「頭の中は役のことでいっぱいですが、家に帰ると“無”になります。“ビッグバンの前の無”という感じ。演じることは、今回の舞台ではないですが、まさに“終わりのない旅”に出ている気分です(笑)」

(取材・文/菊地陽子)

週刊朝日  2019年9月6日号