「今日は体の調子がいいとか、食事がおいしかったとか、小さなことでいいから相手の心をノックしてあげることが、豊かな性生活の土台を築くのだと思います」

 ここで男性にとって勇気づけられる話をひとつ。

 冒頭のセックスレスに悩む70代の男性は、最近レスの解消に成功したという。

「今は年に4~5回、妻とセックスするようになりました。最初は誘うのが恥ずかしかったけど、『一緒にランチに行こう』とか『お風呂に入らないか』とか、そういう軽いところからスキンシップを始めた。今では朝から晩まで会話が絶えなくなりましたよ」

 さらに男性は「自分で目標を立てたことが夫婦仲を深めた」とも感じている。

「博士号を取るために65歳から大学院に通い始めたんです。すると妻も応援してくれて、卒業式も一緒に出てくれました。イベントがあると、ふたりの気持ちも自然と盛り上がりましたね」

 退職後は家に閉じこもりがちになり、妻への依存心を強める男性も少なくない。一方で、そうした夫の態度を煩わしく感じる妻もいる。会話だけでなく、日頃の行動も自分(アイ)をベースに考え、独立心をもって過ごすことが、性的魅力を維持するコツかもしれない。

週刊朝日  2019年8月30日号より抜粋