「ベネッセコーポレーションの調べでは、私立大学の推薦入試出願者は、17年を100として、18年が105、19年は117と激増しています。AO入試にしても18年は105、19年には110。やはり一般入試の難化によって、合格を前倒ししたいと考える受験生が増加してきたとみられます」(同)

 その戦略自体は間違っていないが、大学を問わず「合格」だけを目標にしてしまうと、希望しない大学に進学し、将来的に後悔することにもなりかねない。

「AOは併願可能かどうかがポイント。関西は併願可能な大学が比較的多いので、AOで合格を確保したあとでも、レベルの高い第1志望をめざすことが可能です。それに対して首都圏の大学は専願が多いです。自分の目標や、将来やりたいことなどを考えあわせて、本当に自分が行きたい大学だと判断できればAOでも推薦でもいいと思います。ただし、一般入試を回避するということだけなら、入学後に後悔することになりかねません」(同)

 19年の入試動向をまとめると、前年の結果を受けて、より慎重になって併願校を下位にシフトする動きが過度に加速。地滑り的に中堅以下の大学に受験生が集中してしまったといえそうだ。渡邉さんは言う。

「受験生は敏感ですからね。入学定員管理の厳格化で必要以上に安全志向が強まったことで、中堅大学の難易度が極端に変化してしまったと考えられます」

 次に、来たる2020年入試がどうなるか、考えてみたい。これまで述べてきた19年の入試状況を変えるような要因は今のところ見当たらない。さらに、翌年にはセンター試験にかわって「大学入学共通テスト」が導入される。浪人したら、新しい試験を受けることになるため、安全志向はさらに強まる可能性がある。

 河合塾池袋校の校舎長、鈴木勝洋さんは、

「新入試を控え現役合格を意識した心理から安全志向となることが予想されます。この春の模試では、難関大学を敬遠する動きが鮮明です。入試改革前年度を『一つ上をめざすチャンス』と捉え、目標設定することが重要となります」

 と話す。

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