その意味では、2軍で調整してきた投手の新しい可能性にかけるという手もある。それはベテランだっていい。中日は松坂大輔が7月16日に今季初登板した。いくら昨年何度か対戦しているといっても、阪神の打者は戸惑っていたし、対策を立てようにも「今年の松坂大輔」のデータは少ない。その点で投手が有利に立てる。首脳陣にとっては勇気がいることかもしれないが、各球団とも、2軍の投手と、ここまで1軍で投げてきた投手の疲労度をしっかりとてんびんにかけて起用してもらいたい。

 大輔の投球もテレビで少し見たが、昨年以上に投球に迷いがなくなったと感じた。それは緩急、ボールを動かすことを完全に主軸とし、直球はアクセントに使うという投球だ。ただ、かつての変化球投手とは少し違う。今の時代に即し、135キロ前後でボールを動かして勝負する。今の各球団の野手は150キロ前後の速球に対し本当に強くなっているが、135キロ前後だと戸惑うはず。まだ白星は挙げられそうだ。

週刊朝日  2019年8月2日号

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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