なお、浴室用電気乾燥機やビルトイン式電気食器洗機など予兆が表れにくい製品に対しては、国が長期使用製品安全点検制度を設けた。業者は引き渡し時に説明義務があるほか、名簿に登録されている所有者に点検を通知するなど保守の義務がある。

 一度、使っている電気製品の「標準使用期間」も確認しておきたい。経年劣化による製品事故を防ぐため、国は09年に長期使用製品安全表示制度を設けている。経年劣化の事故が多い製品については、「設計上の標準使用期間」と注意喚起などの表示を義務化した。

 都内の繁華街にある家電量販店の扇風機売り場を訪ねてみると、標準使用期間が10年の製品もあれば、5年のものもあった。扇風機売り場の店員はこう話している。

「大手メーカーはだいたい10年です。それ以外のメーカーでは5年とか7年とかもあります。扇風機は最長10年で、大手メーカーならモーターもしっかりとしていて、自信を持って商品を出しています」

 日本電機工業会(JEMA)の担当者はこう説明する。

「標準使用期間は標準的な使用条件で安全上、支障なく使えるという、あくまで目安です。期間を超えるとリスクが増大するので、注意して使ってください」

 一方、買い替え時期がわかりやすい製品もある。照明器具だ。日本照明工業会は「ランプを交換すれば照明器具をずっと使えると考えるのは間違い」とし、「10年たったら黄信号、15年たったら赤信号」とホームページで呼びかけている。一般に使用年数が10年を超えると摩耗故障期の交換実施ゾーンに入り、15年を過ぎると故障率が上がり直ちに交換推奨期間となる。

 最近の電気製品は故障が少なく、新製品に買い替える必要性を感じない人も少なくない。とはいえ、形あるものはいつか壊れる。加齢で聴力や視力が衰えれば、その予兆に気付きにくくなるだろう。

「今後、年金の受給額の減少という話もあり、いま以上に高齢者において、製品の経年劣化事故のリスクが高まっていくという意識はあります」(前出の大澤室長)

 高齢化の進展で経年劣化による事故への対応は待ったなしの課題だ。(本誌・浅井秀樹)

週刊朝日  2019年8月2日号