シム:最初に韓国語に翻訳された台本を読んで、流れを覚えてから、日本語の台本でセリフを覚えました。「この言葉をこう表現するんだ」とわかって、自然に日本語が理解できた感じです。

――韓国と日本の第一線で活躍する2人。互いの演技に触発されることも多かったようだ。

シム:私は最後の松坂さんの表情がすごく印象深かったです。いままで見たことのない顔だと思います。

松坂:ありがとうございます。シムさんのお芝居はテストや本番で毎回、くる球が違うんです。次はどんな球がくるかと楽しみでした。

シム:毎回ちょっと違う表情とか、違うトーンを試すタイプなんです。松坂さんは普段どんなふうに役作りをしますか?

松坂:役柄によって違うんですが、例えば歴史上の人物を演じるときはその人物を徹底的に調べて、その歴史の流れから台本にあるセリフを言ったときの人物の感情を想像して、自分のなかに入れておきます。

シム:はい。

松坂:その状態で現場に行って、監督の意見を聞いたり相手の方と芝居をしてみて「あ、自分が準備したものでなくていい」と思えばそれは全部捨てます。最終的には現場で生まれるお芝居が、真実に近いものという気がするんです。

シム:現場で感じた感情をそのまま演技に出すほうですか?

松坂:どちらかといえばそうです。でもそればかりになると最初と最後のお芝居がつながらなくなったりするので、そこは気を付けながらやっていますね。

シム:韓国の俳優さんは、何度もディスカッションを繰り返しながら、情熱的な芝居をされる方が多いです。感情を発散させる芝居も多く、そういうジャンルの映画も多い。逆に日本の俳優さんは静かでも深い芝居をされる人が多くて、松坂さんもそうだと感じていました。だからぜひ伺いたかったんです。勉強になりました。

松坂:僕はシムさんを映画「サニー 永遠の仲間たち」(11年)などで拝見していて、表情でさまざまな感情を的確に伝える方だなあと思っていました。この映画でご一緒できてうれしかったです。

シム:私こそ! ちなみに、松坂さんのドラマ「ゆとりですがなにか」が大好きなんです。

松坂:それ、ちょっと意外でした。それに、ドラマに出ていた俳優の岡田将生が好きだって言ってたよね(笑)。

シム:いえ、松坂さんもすごく好きです!(笑)

(構成/ライター・中村千晶)

週刊朝日  2019年7月12日号