帰り際、世界一有名な放送原稿「夜の静寂のなんと饒舌なことでしょうか」の「静寂と饒舌」のパラドックスについて伺った。
「いや、この部分は青臭い、文学青年じゃないんだからと先輩たちから散々文句を言われたよ」
Fさんは苦笑した。
「でもそれは激励だと思って、頑張って押し通した」
番組はリスナーが眠るためのもの。演出は夢の中へ連れていくつもりでとも教わった。城達也さんと脚本のFさん。番組のカラーはこの二人が作った。もうこの世にはいない。「遥か雲海の彼方に」に旅立った。
誰もが海外に行く時代となり、番組の主題も「憧れ」から「出会い」となった。ただ放送時間は変わらず、今夜も午前零時にテイクオフする。
※週刊朝日 2019年7月5日号