日銀は国債を“爆買い”し長期金利は低下。今や地銀の大きな資金運用先だった10年国債はゼロ金利になってしまった。超低金利で長期と短期の金利差はなくなり、貸出金の利ざやが減って融資でもうけることもできない。

 米国では1980年代後半、貯蓄貸付組合(S&L)という小さな金融機関の破綻(はたん)が相次いだ。この金融危機を米国の中央銀行であるFRBは、長期と短期の金利差を拡大して乗り切った。現在日銀がやっていることは正反対なのだから、地銀経営者から恨み節が聞こえてきそうだ。

 これまで地銀は、保有している株式や国債を売ることで何とかしのいできたが、もはや体力の限界が近づいている。助けるためには、日銀が異次元緩和をやめ、長期と短期の金利差を広げなければならない。

 しかし異次元緩和をやめることで日銀が国債を買わなくなれば、政府が「資金繰り倒産」をしかねない。政府の倒産を避けるため、地銀を切り捨てる決断を近い将来に迫られそうなのだ。大丈夫か、日銀?

週刊朝日  2019年6月14日号

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藤巻健史

藤巻健史

藤巻健史(ふじまき・たけし)/1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長などを務めた。主な著書に「吹けば飛ぶよな日本経済」(朝日新聞出版)、新著「日銀破綻」(幻冬舎)も発売中

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