少女漫画原作とはいえ、いわゆるスイーツ映画ではない。愛や善意に触れ、腐っていた人が再生していく過程は、どこか神話的でもある。

「現場でも奇跡的なハプニングがありました。撮影初日に町田くん役の細田(佳央太)くんが熱中症で倒れて、それ以降、彼が独特なオーラを纏(まと)い始めた。あの瞬間から、町田くんが乗り移ったんだと思います(笑)」

 映画の魅力については「いい大人たち同士の悪巧み。“あれやっちゃおうか”と遊びながら、従来のルールを破壊していくことができる点」と話す。この映画で伝えたかったのは、「映画は本当にあきれるほど自由なもの」というメッセージだという。(取材・文/菊地陽子)

週刊朝日  2019年6月7日号