永野健二(ながの・けんじ)/1949年生まれ。京都大学経済学部卒業後、日本経済新聞社入社。証券部記者、編集委員などとして取材にあたる。日経ビジネス編集長、日経新聞編集局産業部長、大阪本社代表、BSジャパン社長などを歴任。著書に『経営者 日本経済生き残りをかけた闘い』(新潮社)など。
永野健二(ながの・けんじ)/1949年生まれ。京都大学経済学部卒業後、日本経済新聞社入社。証券部記者、編集委員などとして取材にあたる。日経ビジネス編集長、日経新聞編集局産業部長、大阪本社代表、BSジャパン社長などを歴任。著書に『経営者 日本経済生き残りをかけた闘い』(新潮社)など。
奥山俊宏(おくやま・としひろ)朝日新聞編集委員/1966年生まれ。東京大学工学部卒業後、朝日新聞入社。東京社会部、大阪社会部などを経て特別報道部。経済事件、内部告発検察から原発事故、内部告発問題まで幅広く取材。『法と経済のジャーナル Asahi Judiciary』の編集も担当。著書『秘密解除 ロッキード事件 田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店)で第21回司馬遼太郎賞(2017年度)を受賞。日本記者クラブ賞(2018年度)も受賞している。
奥山俊宏(おくやま・としひろ)朝日新聞編集委員/1966年生まれ。東京大学工学部卒業後、朝日新聞入社。東京社会部、大阪社会部などを経て特別報道部。経済事件、内部告発検察から原発事故、内部告発問題まで幅広く取材。『法と経済のジャーナル Asahi Judiciary』の編集も担当。著書『秘密解除 ロッキード事件 田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店)で第21回司馬遼太郎賞(2017年度)を受賞。日本記者クラブ賞(2018年度)も受賞している。
村山治(むらやま・おさむ)/1950年生まれ。早稲田大学政経学部卒業後、毎日新聞社入社。大阪、東京社会部を経て91年、朝日新聞社入社。金丸脱税事件(93年)、大蔵汚職事件(98年)、日本歯科医師連盟の政治献金事件(2004年)などバブル崩壊以降の政界・経済事件などを取材。2017年11月からフリーランスのジャーナリスト。著書に「市場検察」(文藝春秋)など。
村山治(むらやま・おさむ)/1950年生まれ。早稲田大学政経学部卒業後、毎日新聞社入社。大阪、東京社会部を経て91年、朝日新聞社入社。金丸脱税事件(93年)、大蔵汚職事件(98年)、日本歯科医師連盟の政治献金事件(2004年)などバブル崩壊以降の政界・経済事件などを取材。2017年11月からフリーランスのジャーナリスト。著書に「市場検察」(文藝春秋)など。
「バブル―日本迷走の原点―」(新潮文庫)
「バブル―日本迷走の原点―」(新潮文庫)
「バブル経済事件の深層」(岩波新書)
「バブル経済事件の深層」(岩波新書)

 令和の時代に入ったとたん、米中の対立が深刻になり、景気の先行きが怪しくなってきた。経済に限らず、孤独死や認知症患者の急増など、これからの数十年には様々なリスクが想定される。厳しい将来に備えるため必要なのは、過去の失敗に学ぶこと。そのためにいまやるべきは、日本を長期低迷させたバブル崩壊の検証だ。今回は、問題に深く切り込んだ3人の特ダネ記者に、失敗の本質について語ってもらった。

 平成はバブル経済真っ盛りの1989年に始まった。大きく膨らんだ泡がはじけると、社会は混乱し経済は長く低迷。いまや「失われた20年」を超え、「失われた30年」とも言われる。

 バブル崩壊の影響がここまで深刻になった理由はいろいろある。政治や行政、企業のリーダーは保身に走り、不良債権処理などの問題を先送り。多くの国民は金もうけに熱狂し、痛みを伴う改革に背を向けた。銀行が破綻(はたん)し経営者らの刑事責任が問われたが、捜査機関の対応は後手に回った。

 アベノミクスで株価が上昇し、経済はいったん回復したように見えるが、政治や行政、企業の“先送り体質”はいまも変わっていない。
 こうした失敗の本質を探る本が、ここに来て注目されている。

 元日本経済新聞記者の永野健二さん(69)の「バブル―日本迷走の原点―」(新潮文庫)は、2016年11月に出版された書籍が今年4月に文庫になった。霞が関や銀行がチェック機能を失って問題をごまかし続け、「第二の敗戦」とも言うべき痛手を被ったことを、当時のキーマンへの取材をもとに描く。バブルを完全に防ぐことはできないが、悪影響をできるだけ小さくすることはできると指摘。時代に真摯(しんし)に向き合う「謙虚さ」が、私たちに求められているという。

 4月の新刊「バブル経済事件の深層」(岩波新書)は、朝日新聞の社会部記者として検察などを取材してきた奥山俊宏さん(53)、村山治さん(68)の共著だ。銀行を巡る事件を追った記者の目を通じて、“バブルの真犯人”を浮かび上がらせている。大蔵省を頂点とする護送船団型のシステムが機能しなくなったのに、旧来の慣行にとらわれ、新しいシステムのための環境整備を怠った。崩壊を始めたバブルの現実に、当事者たちは目を背けてしまった・・・。
 今回、3人の著者にそろって話を聞いた。共通していたのは、「きちんと検証しないと同じ失敗を繰り返す」という危機感だ。

 永野さんは証券業界を担当し数々の特ダネをものにした「伝説の記者」。バブルの背景には、銀行の護送船団方式など日本の経済システムが、グローバル化の時代にそぐわなくなったことがあるという。
 永野さんはそのシステムを「渋沢資本主義」と呼ぶ。日本の資本主義の父とされ、新しい1万円札の肖像にもなる渋沢栄一のことだ。

「文庫になった本では、全体像でバブルの時代を語ることに主眼を置いています。高度成長を支えてきた政官財の仕組みは、世界的な自由化の流れを受けて、1980年代には変わらなければいけませんでした。でも、リーダーたちは構造改革に向き合わなかった。銀行は土地を担保にお金をどんどん貸し、大蔵省もそれを認め、官民一体でバブルを大きくしてしまった。バブルに踊っている人も悪いけれど、そこにお金を貸している銀行の責任はどうなるのか。経済の最前線で取材していて、そういう問題意識が当時からありました」

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時代にあわなくなった渋沢資本主義