あとは投手との歯車だよね。投手がいつまでも援護してもらえなかったら投球が苦しくなっていくように、打者だって何本打っても、投手が失点ばかりしていたら、ほんの何%の部分の本当の意味での集中力はそがれてしまう。

 その点でいえば、西武がちょっと心配かな。打線は相変わらずの破壊力があっていいのだが、投手陣がふがいなさすぎる。昨年も打線の力でリーグ優勝を勝ち取ったとはいえ、先発ローテーションの中では、菊池雄星(現マリナーズ)と多和田が試合を作っていた。だが、今年は先発投手が試合を作る確率が低い。序盤から大量点差がついたら、打者も集中力を欠き、自分本位の打撃が目立つようになる。勝負の夏に向けて、早く投手陣の形ができあがらないと、夏場以降に大きく失速してしまう。

 毎年のように言うが、この時期はデータをそろえ、調子の良い選手を見極めて1、2軍の入れ替えを活発にして起用していく。その中で夏以降の戦力整備をしていくことが大切だ。チーム全体を見渡して、絶対的に足りない部分はトレードや外国人補強などで埋めていくしかない。

 楽天が則本昂、岸という2人の柱を欠きながら上位争いをしている。打線は形になっており、投手陣が整えば、優勝争いするチャンスは増す。石井一久GMも夏以降の戦いを見据えて動くことだろう。開幕から50試合の戦いを分析し、手を打つ。フロントの決断力も注目される時期に入る。

週刊朝日  2019年5月31日号

著者プロフィールを見る
東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

東尾修の記事一覧はこちら