昭和歌謡のグループ・サウンズ風の曲調で、下世話で俗っぽい歌謡テイスト満載の「Balloon Balloon」からはメンバーの遊び心がくみ取れる。「Titta Titta」はボ・ディドリー・スタイルに倣った初期ストーンズ風で、キース・リチャーズ風のリード・ギターも顔をのぞかせる。

 アルバムの最後を締めくくるのはTVドラマ『刑事ゼロ』の主題歌となり、アルバムより先に配信された「I don’t know」。今回のLA録音での最大の成果と言えるもの。ベースやドラムスの骨太な演奏の一方、メロディーやギターは歌謡的。独特のミクスチャー・センスに独自性を発揮、というあたりが彼ららしい。

 手探りで活動を再開して以来、新曲を吟味し、試行錯誤を繰り返してきたという。本作はその足跡の集大成、ドキュメントであり、「二度目のファースト・アルバムだ」と語る。

「やっぱり音楽とは人間性だし、愛や絆から生まれる言葉やメロディーが全てだと思う。それを肝に銘じてこの『9999』を皮切りに、これからもイエローモンキーなりの音楽表現を続けていきたい」と吉井は意欲的だ。(音楽評論家・小倉エージ)

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小倉エージ

小倉エージ

小倉エージ(おぐら・えーじ)/1946年、神戸市生まれ。音楽評論家。洋邦問わずポピュラーミュージックに詳しい。69年URCレコードに勤務。音楽雑誌「ニュー・ミュージック・マガジン(現・ミュージックマガジン)」の創刊にも携わった。文化庁の芸術祭、芸術選奨の審査員を担当

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