このコラムを読まれている方はご存じかと思うが、ここまで事態を放置してしまった以上、日銀や円の信用失墜は必至だと私は思っている。その対処法は「新券発行&預金封鎖」か「日銀廃止&新中央銀行創設」だろう。

 ただ新券発行といっても、1946年のときでも印刷が間に合わず当初は証紙を貼ってしのいだとされる。当時と違い、今の情報化社会では新紙幣を秘密裏に刷るのは不可能なので、どうするのだろうと思っていた。そこでこのニュースの出現だ。そうか、この手があったのか。

 前回は刷新する2年前の発表だったのに今回は5年も前。いつ危機が来ても十分な新券はそろう。麻生太郎財務相は、前回、発表から刷新まで時間が短かったことについて、「あのときは偽造紙幣がけっこう増えていたので急がなければならなかった」と説明しているが……。

 紙幣刷新への不安を感じるのは私だけだろうか? 勘ぐりすぎだったと将来言えることを、切に願う。

週刊朝日  2019年4月26日号

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藤巻健史

藤巻健史

藤巻健史(ふじまき・たけし)/1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長などを務めた。主な著書に「吹けば飛ぶよな日本経済」(朝日新聞出版)、新著「日銀破綻」(幻冬舎)も発売中

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