前川喜平さん。本連載では読者からの前川さんへの質問や相談を受け付けています。テーマは自由で年齢、性別などは問いません。気軽にご相談ください。
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※写真はイメージです (c)朝日新聞社
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 文部科学省で事務次官を務めた前川喜平氏が、読者からの質問に答える連載「“針路”相談室」。今回は、不登校児が出席日数不足から高校入学に苦戦しているという相談です。

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Q:友人の子ども(中学生)が不登校になりました。「高校からやり直せるように自宅で学習を」とアドバイスしたのですが、不登校の子が多く存在する現在、欠席がいくら多くても卒業はさせてくれるのに、出席日数に縛られ高校にはなかなか入れないと聞きます。結局、学校に行けない子どもはだめだと決められているように感じてしまうのですが。

A:出席日数を理由に入れてくれない高校など選ばなきゃいいと思います。大事なことは、その子に合った高校選びをすること。心配なら、出席日数で合否を判断するかどうか、高校に聞いてみたらいい。

 なぜなら、入試方法というのはある意味、「私たちは、こういう子を求めている」という学校側のメッセージでもあります。今はいろんな高校があるし、いろんな学び方がある。言われたことをただ学ぶのではなく、主体的な学習ができる子に入ってほしいという高校もあるし、中学の出席日数を考慮していない学校だってあります。中学は不登校でも、高校では休まずに登校する子が多いということは、高校側も経験として分かっているはずですから。

 日本では「皆勤賞」という全く無意味なものがあります。休まないと偉いという考えで、場合によっては確かに入試に有利になることもあるでしょう。しかし私は「皆勤賞」なんて意味がないし、なくしていいと思う。不登校であっても、そんなに気にすることはありません。もしご友人のお子さんが通っているのが公立中学だとすれば、ほぼ確実に卒業できるし、高校入試も受けられます。

 かつて高校入試は、必ず学力検査と内申書の両方を評価しなければならないものとされていました。ですが受験競争の過熱化が問題になった時期、入試の制度は見直され、学校によっては学力検査を実施せず、内申書だけで合否を決めることも可能になりました。しかし内申書の評価がダイレクトに入試に響くことになると、中学3年間、とにかく“いい子”でいることを強いられるという弊害も生まれた。そこで次に、学力検査のみで合否を決める学校もあっていいということになった。今は、学力検査と内申書のどちらも使わず面接、小論文、実技などによって評価する入試も可能になっています。入試の方法の多様性が広がり、個性を認めてくれる学校も増えています。

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前川喜平

前川喜平

1955年、奈良県生まれ。東京大学法学部卒業後、79年、文部省(現・文部科学省)入省。文部大臣秘書官、初等中等教育局財務課長、官房長、初等中等教育局長、文部科学審議官を経て2016年、文部科学事務次官。17年、同省の天下り問題の責任をとって退官。現在は、自主夜間中学のスタッフとして活動する傍ら、執筆活動などを行う。

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