女性に愛されたショーケン(c)朝日新聞社
女性に愛されたショーケン(c)朝日新聞社

 歌手・俳優の“ショーケン”こと萩原健一さんが、消化管間質腫瘍(GIST)のため3月26日に死去した。68歳。

 GSブームの中核をなした人気グループ「ザ・テンプターズ」のボーカルとして16歳でデビュー。俳優としても、ドラマ「太陽にほえろ!」や「傷だらけの天使」などヒット作に多数出演した。

 ショーケンを苦しめた消化管間質腫瘍は、「がんではありませんが、胃腸にできる悪性腫瘍であり転移もおこします」と、京都府立医科大学付属病院消化器内科・がん薬物療法専門医の吉田直久講師は言う。

「症状がなく大きくなってから見つかることも少なくない。一般的に外科切除が一番望ましい治療です。主に中高年の方が罹患します」

 俳優としての出世作、1972年の映画「約束」では、女優の岸惠子さんの相手役をつとめた。芸能リポーターの石川敏男さんが言う。

「岸さんは彼より20歳近く年上の女性なんですよ。それなのに、撮影が始まると、すっかりショーケンにほれ込んでいたようです。そのぐらい男としての魅力にあふれた役者でした。『傷だらけの天使』をもう一度やりたくて、脚本の市川森一さんなどに相談したりしたこともあったようです。だけど、当時は『アニキ、アニキ』と慕う役柄だった水谷豊さんが、すっかり忙しくなっていました。市川さんも亡くなってしまいましたし、結局かなうことはありませんでした」

 ショーケンの俳優としての魅力を、「観察力・吸収力・表現力。三拍子そろってすごく、これは天才だと思いました」と、出演作の脚本や演出を手掛けた倉本聰さんは振り返る。

 脚本を担当した、74年放送のNHK大河ドラマ「勝海舟」では、坂本龍馬を同性ながら恋人のように慕う設定の岡田以蔵を演じた。

「坂本龍馬と同性愛にしてはどうかと彼に提案され、びっくりしましたね。まだテンプターズの匂いも残るころで、役者としての基礎もない。それでいて次元の違う、既存の殻を破るような発想をするんです。ベタベタくっつくとかで表現するのではなく、何気ないしぐさで恋愛関係、尽くしているんだということを表現する。驚きましたね」

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