「マンションの場合、1千万円あれば、断熱性能を上げたエコ住宅はつくれる」(三井不動産リフォームでリフォームの設計を担当する関谷友美さん)という。
マツミハウジング(東京都小平市)は、2012年から、「センターダクト換気」というオリジナルの外気浄化装置に、ダクト用のエアコンを組み合わせて、室内の温度差をなくす「涼温な家」を提供している。全館空調システムに、高性能な換気をつけたようなもので、前出の秋元教授も「かなり事例も増えてきています。正しい設計で正しく使えばこういうアイデアは活用できますね」という。部屋中にエアコンを設置する必要もないので、ランニングコストが安く抑えられる。導入には300万円前後かかり(断熱費別)、「元を取る」にはかなり時間がかかりそうだが、数年前に導入した東京・世田谷の家で家族3人で暮らす主婦はこう話す。
「光熱費はだいぶ下がりました。部屋も廊下もどこも同じ温度なので廊下が寒くない。エアコン1台で6部屋すべてまかなえるのは大変助かっています。
お布団が一年中同じ厚みのもので大丈夫になりました」
マツミハウジングの代表取締役社長の松井祐三さんも「年間の電気代は3分の1ぐらい減るでしょう」。
それよりも長く住み継がれる資産価値の高い家となり、住まい手が健康になることのほうが大きいという。
「いつも暖かくて、空気もキレイで、においもこもらない。よく眠れるようになり、家の中がどこよりも心地よいので、休みの日は『どっか行こうか』じゃなくて『休みだからこそ家にいよう!』となる。以前、80代のお父様の介護のためにと40代の施主さんが導入されたことがあります。お父様は工事のときは、ほぼ寝たきりだったのに、導入後はキッチンまで歩けるようになり、要介護度が5から2になったと聞きました」(松井さん)
親のためにさっそくリフォームを提案しようと考える人もいるかもしれないが、注意点もある。
「時間をかけてつくってきたライフスタイルを変えられない人もいるからです。親たちにとっては今の暮らしがスタンダード。今の生活に不便を感じていないのに第三者がリフォームを押し付けたりするのは、失礼なことにもなるのです」(住生活コンサルタントの大久保恭子さん)
まずは、こんなにエコで便利なものがあるんだよ、一緒に見に行かない? そんな気持ちで提案するのがいいのかもしれない。(本誌・大崎百紀)
※週刊朝日 2019年4月5日号