「勧告に従っていただけるのなら、届け出の変更手続きを行うことになります。勧告を守らずにサシバなどの生息地に支障を及ぼした場合、条例の規定に中止命令があります。ですが、工事の中止命令の要件に合ったからといって、直ちに命令が出せるものではない」

 業者は勧告を受け入れた。同社長を直撃すると、こう明言した。

「環境アセスは通常は『評価書』を提出すれば、問題なく開発に入れるのです。15年に環境アセスの事前調査をしたときは、サシバはいなかったのです。現場はサシバの保護区ではないし、代替地や営巣木も残すと伝えましたが、県は認めませんでした。私どもとしては、県のご指導に従わざるを得ません。県とも協議し、指導された面積を残した図面に基づいて設計変更を開始したところです。だいたい3~4カ月かかると思います」

 景観、気温上昇の懸念についてもこう語った。

「事業地のまわりを幅30メートルの樹林帯で囲います。ソーラーパネルはほとんど見えなくなりますし、周辺の気温の変化も抑えられるはずです」

 また、山田町との協議のため、15年から四日市市を100回以上訪問。地元住民と合意形成に努めてきたことを強調した。

「開発は、地元の理解がなければできません。われわれには丁寧に説明する道しかない。自然と折り合いをつけながら、精一杯いい施設を造るしかありません」

 現在、サシバの営巣地から離れたところから順次、工事を進めているという。

 業者が県の行政指導をきちんと履行するか、今後も注目される。

 前出の日野教授はこう指摘する。

「多くの自治体は許可を出したら、面倒臭がって何もしませんが、今回、三重県は行政としてしっかり機能しました。環境アセスには強制力がないので、やはり『ゾーニング』という手法が必要です。自治体は区域をランク付けして、絶対に開発してはならないエリアを決めておくのです。そうすれば事業者もそこを避けるので、今回のような問題は未然に防ぐことができたはずです」

(本誌・亀井洋志)

週刊朝日  2019年3月29日号より抜粋

■当初、「サシバ」と見誤って「オオタカ」の写真を載せていました。3月28日に「サシバ」の写真に差し替えました。お詫びします。