<安易に本事業の実施を認めることは今後の環境アセスメントに禍根を残すなど、複数の委員から極めて強い反対意見の表明があった>

<特に絶滅危惧種のサシバが事業実施区域内及び区域付近で繁殖していることに象徴されるように、生物多様性に富んだ、四日市市に残された貴重な里山環境である>

 知事意見は強制力を持たないが、環境アセス担当の県職員はこう話す。

「メガソーラーについては反対運動もありますし、委員会でも、自然エネルギーとはいえ貴重な自然を壊してまで事業を行う必要があるのかという意見があり、県としても重く受け止めています」

 18年8月末、業者から「評価書」が提出された。これまで30メートルだったサシバの営巣地周辺の樹林帯を175メートルに拡幅し、5ヘクタールの保全エリアを設定する計画を示した。太陽光パネル数も20万7千枚とし、当初の計画より3万枚削減した。

 この評価書の内容に憤慨したのが、県の環境影響評価委員を務める日野輝明・名城大学農学部教授だ。

「評価書は知事意見をまったく反映していないマイナー修正でした。こんなことだったら委員をやっている意味はないので、県に辞意を伝えました」

 だが、県も“次善の策”を模索していた。県自然環境保全条例に基づく「勧告」だ。日野教授が続ける。

「サシバ保護のため、県職員から『事業者に対して、最低限これだけは守ってください、という勧告を出せるので、そちらで協力いただけないか』というお話があったので、私は(委員辞任を)翻意し、喜んで協力させていただくことにしました。岩手大学にサシバ研究では第一人者の先生がいますが、県の職員は直接意見を聞きに行っています」

 県自然環境保全条例の規定では、1ヘクタール以上の自然地を改変する場合、事業者は届け出なければならないことになっている。業者は昨年12月20日に届け出。それを受けて県は、(1)南側斜面林一帯を残すこと(2)20ヘクタール以上の森林を残すこと(3)サシバの営巣木から半径200メートル以内の森林を残すことを「勧告」したのだ。

 県の職員が説明する。

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