林:自分が描いた油絵を売る人とかもいるんですって?

小泉:います。自分の絵とか詩集とか、書とか。雑巾もあります。昔は雑巾はお母さんがミシンで縫ったりしてましたけど、今は家にミシンもないし、面倒くさいのでメルカリで買っちゃう人がけっこういるんです。他にもシーグラスでアクセサリーを作ってメルカリで売っている小学生もいたり。子どもが作ったものを、大人がちゃんと値付けをして買ってあげるというのは、すごくいいお金の勉強であり体験だと思うんです。メルカリは、そういう手触り感のあるサービスなんですね。

林:なるほど。やっぱりみんな高く売れるとうれしいんでしょうね。

小泉:それが、高く売れたからうれしいという人がいちばん多いのかと思ったら、「もったいないから誰かに譲りたい」というのと、「自分のお店を持ってるみたいで楽しい」という満足感もあるんですね。特に女性に多いのは、「500円でも千円でもいい。売れたことで自分が承認された気持ちになってうれしい」という承認欲求が満たされる感覚です。

林:アマゾン楽天なんかとは、また違った動きですよね。

小泉:アマゾンさんや楽天さんは、基本的に新品で、「これを買いたい」という目的があって見ると思うんです。例えばある調査ではアマゾンさんは1カ月の滞在時間が約1時間と言われてるんですけど、メルカリは5時間なんですよ。

林:えっ、5倍も長いんですか。

小泉:ええ。メルカリは商品が毎日入れ替わるし、新品から昔のものまであるので、「このブランドの10年前のデザインが欲しい」とか、「あのデザイナーの時代が好きだ」と思うと、それが売られている。しかもいつ出品されるかわからないので、毎日見に行くうちに習慣化し、それが楽しみになるという流れです。だからメディアとeコマース(電子商取引)の中間みたいな存在かなと思ってますね。

林:ほぉ~。以前、夏休みの読書感想文がメルカリで売りに出されて、さすがにそれはストップされましたけど、卒論なんかもメルカリで売買されるようになったら、それはやっぱりちょっと……と思いますね。

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