呼吸筋の中心となる肋間(ろっかん)筋は、持続力を生み出す筋線維「赤筋」が大半を占める。瞬発力を生み出す白筋は、わずか3%ほどしかない。体の筋肉全体でみると白筋と赤筋がほぼ半々のため、肋間筋は特別な存在であることがわかる。

 この体操はもともと、呼吸器疾患の人たちのリハビリ用に開発されており、肋間筋のストレッチにつながる。健康な人でも肺の老化の速度を緩めたり、ストレスを軽減させたりする効果がある。東日本大震災の被災地の子どもたちがこの体操を続けたところ、ストレスによる不安な気持ちが軽減され、表情が明るくなったとの報告もあるという。

 ストレッチを地道に続け、呼吸筋の力を高めるとよい。胸を張って背筋を伸ばし、姿勢をよくする。長く大きな声を出したり、有酸素運動をしたり。こうした習慣づけが呼吸機能アップにつながる。

■胸の呼吸筋を向上させる5つのポイント
【1】胸を張り、背筋を伸ばして姿勢をよくする
【2】呼吸筋をやわらかくするストレッチを行う
【3】長く声を出したり、声を出して歌ったりする
【4】息を吐ききるトレーニングをする
【5】有酸素運動・持久運動を行う
本間生夫『すべての不調は呼吸が原因』(幻冬舎新書)から

 1回の呼吸による換気量は約500ミリリットルと、ペットボトル1本分相当。呼吸の回数は、1分間に15~20回、1日2万回、生涯では6億回にも及ぶ。その積み重ねで、私たちの生命は保たれている。

 質のよい呼吸を続けることは、健康維持に欠かせない。たかが呼吸、されど呼吸。よい呼吸法を意識して身につけることで、健やかで幸せな人生を送りたい。(及川知晃)

週刊朝日  2019年3月1日号より抜粋