ある高齢の女性は、「おばあさんはいやいや手伝ったのではないか」と発言した。確かにおじいさんがおばあさんを、イヌがネコを、ネコがネズミを呼んでくる。協力して困難な仕事をやり遂げたという話が一変して強制労働にも見えてくる。そんな話の流れから、「目指すものが違っても協力できるのか」を話し合った。終了後、その女性は、「人生でいちばん幸せな時間だった」と感想を語った。

「正確な理由はわかりませんが、実感のこもった発言をして、それをみんながちゃんと受け止めて話を展開させた。今まで男性に従ってきて、自分の意見を表立って言う機会がほとんどなかったのかもしれません」

 自分の中に変化が起きて、新たな一歩を踏み出す人もいるという。哲学対話の実践法も詳しく書かれている。(仲宇佐ゆり)

週刊朝日  2019年2月15日号