朝、母の分まで食事を作る。介護施設の送迎でデイサービスに向かう母を見届けてから出勤する。帰宅後に夕食も作る。出張があれば、母を介護施設のショートステイに預ける。自分の負担を減らすため、最近は月の半分くらいはショートステイに任せている。

 介護が生活の中心にあるものの、今では夫婦ともに別居生活に慣れた。

 ケイコさんは言う。

「お互いが自立し、快適な生活を送っています。むしろ以前より夫婦関係がよくなったと思います」

 2人には、それぞれの母親が穏やかに生活できるようにという共通の目的がある。介護施設や病院の活用方法、お年寄りでも楽しめる音楽会などの情報をそれぞれが持ち寄り、どうするべきかを話し合っている。「同志のような関係」(ケイコさん)なのだ。

 今はどちらかといえば、タカシさんの負担のほうが重い。だからケイコさんも気を配る。タカシさんの残業のときには、夫の母の家を訪ねて寝かせるまで世話をすることもある。

 母をショートステイに預け、夫婦水入らずの時間を作ることもある。近所に数軒ある銭湯のいずれかで体を休め、帰りがけに居酒屋で談笑する。タカシさんの介護の愚痴や、お互いの仕事のこと、すでに独立した子どもたちや孫のことなど、話は尽きないという。

 夫婦それぞれが働きながら親の介護をする。しかも別居。夫婦の関係性が薄まりそうにも見えるが、タカシさんとケイコさんはこの逆境を逆手にとって、絆を深めている。

 筆者の経験上、50代の男性が親の介護の必要に迫られると、「俺には仕事がある。しょうがないじゃないか」と妻に押しつけるパターンが多い。タカシさんは妻の生活を尊重し、炊事も洗濯も掃除も独力でこなしている。その覚悟と行動力を妻も尊敬している。(文中カタカナ名は仮名)

(マネーセラピスト・安田まゆみ)

週刊朝日  2019年2月8日号より抜粋