落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「第三者委員会」。
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2018年、いくつの『第三者委員会』が設置されたのだろう。『第三者委員会』、もう流行語の域である。しかし、我々世間がその調査報告・処分決定に納得することは少ない。偏りや忖度のいっさいない『第三者委員会』は難しいのか。そもそも『第三者委員会』の『第三者委員』は、渦中の当事者が選ぶのか。じゃ厳密に言えば、その時点で『第三者』じゃないよな。『第三者』を選ぶ『第四者』が要るんじゃないか? きりがない。
利害関係も交わりもいっさいない、微塵の妥協も許さない完全無欠の『第三者』を集めればいいのだろうが、まず依頼の電話から面倒臭そう。
担当者「もしもし、実はこのたび弊社の○○問題解決のため『第三者委員会』を設置することになりまして、貴殿に委員をお願いしたく……」
委員候補「え? なぜ私?」
担「△△様のこの分野での御見識はかねて存じております。何卒お力をお貸し頂けませんでしょうか?」
委「あと誰に頼んでいますか?」
担「(数名挙げて)……でございます」
委「それ候補者全員に同時に一斉電話しているんですか?」
担「え? いや……□□様から順番に。△△様は5番目です」
委「5番目? 御社はその依頼順の決定に際し、何を判断材料にされているんでしょうか?」
担「(面倒臭えな)申し訳ありません」
委「いや、別に5番目であることに怒っているワケじゃないんです。ただ1番に依頼する方と5番目の私の間にはどんな差があるのかと。もしその差が仮に“御社との関わりの度合い”であったとしたら、『第三者委員会』の根幹を揺るがすことになるのではないかと危惧しているのです。いや……まだ設置されていませんが、仮にされても、依頼順の理由が納得いかない限り『第三者委員』間の不信感も募り、問題解決のメスが鈍ることにもなりかねません」