「東日本大震災の影響で、日本列島の地下深くにある基盤岩をすべて動かしてしまったのです。一番大きいのは宮城県の牡鹿半島で5・4メートル南東にずれました。首都圏でも30~40センチ動いています。フィリピン海プレートが沈み込む速度は年間4・5センチ、太平洋プレートで年間8センチですから、30~40センチのずれというのは非常に大きな動きだと言えるのです」(島村氏)

 しかも、首都圏周辺の地下は太平洋・北米・ユーラシア・フィリンピン海の4つのプレートが潜り込む、世界でも例がない地帯だ。

「このため、通常は太平洋沖でしか発生しない海溝型地震が、首都圏では陸の下でも起きるのです。内陸直下型はM7クラスですが、海溝型はM8を楽に超えてしまいます。M7とM8とでは、数字は1つしか違いませんが、地震のエネルギーは32倍も大きい。海溝型が首都直下で起きれば、恐ろしい事態になります。東京は非常に危険な地域で、本来、人が住むべきところではなかったのです」(同前)

 そして、最大32万人の死者が想定される南海トラフ地震が襲来するのはいつなのか――。

 政府の地震調査研究推進本部によると、今後30年以内にマグニチュードM8~9クラスの巨大地震が起こる確率は、静岡県から九州沖合にかけての南海トラフが70~80%と予測されている。

 過去には、紀伊半島の東側と西側で時間差を置いて地震が起きたことがある。直近では、南海トラフの東側半分のプレート境界が破壊されて発生したのが、1944年の昭和東南海地震だ。その2年後に、西側半分のプレートが壊れて昭和南海地震を引き起こした。

 1854年には東側で安政東海地震が起きた約30時間後に、西側で安政南海地震が起きている。1707年の宝永地震では、東西で一挙に起こった。

 南海トラフ地震は歴史上知られている限りでは13回起きており、だいたい90年から150年くらいの周期で襲ってくるという。島村氏が解説する。

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人間が落下する可能性も