基底(きてい)細胞がんという皮膚腫瘍もあります。これも黒く、進行するとしこりになります。脂漏性角化症と同じく、高齢者の顔にできることが多い皮膚がんです。さいわい、基底細胞がんは皮膚がんの中でも悪くないタイプのがんです。転移することはほとんどありません。しかし、放置しておけば必ず大きくなり、がんが進行すると骨まで溶かします。早期発見、早期治療が大切です。

■まとめ

 大事なので繰り返しますが「痛くないから悪性ではない」、これは間違いです。がんは痛くないことのほうが多い。また、痛みが出る場合は感染を起こしている可能性を考えます。

 私たち皮膚科医はしこりを触り、硬さ、動きやすさを確認します。外来で超音波(エコー)検査をすることもありますし、しこりが深い場合はCTやMRIの画像検査をします。

 しかし、最終的に診断するには、手術をして病理検査を行う必要があります。私が医学生の頃に首のしこりで相談した医師が「たぶん大丈夫」と言った「たぶん」は、病理検査の確認までしていなかったためです。触診や血液検査、画像検査である程度の予想はつきますが、最終診断は病理組織検査です。皮膚にしこりができた場合、素人判断は避け、皮膚科専門医を受診することをお勧めします。

◯大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医。がん薬物治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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