東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝
東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝
現役時代に過ごした西武は1文字表記で「猫」と記されるらしい (c)朝日新聞社
現役時代に過ごした西武は1文字表記で「猫」と記されるらしい (c)朝日新聞社

 来年から1軍登録人数の増えるプロ野球西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏がそのメリットを解説する。

【現役時代の東尾さんの写真はこちら】

*  *  *

 また野球に新しい可能性が生まれるかもしれないね。来年プロ野球は1軍登録を28人から29人とすることが決まった。ベンチ入りは25人で変わらないから、大差がないように見えるが、各球団、試合ごとに戦術を変えられる。

 1、2軍の入れ替えだと、その選手は10日間は1軍再登録ができないわけだから、好不調でコロコロ入れ替えるわけにはいかない。しかし、29人目が存在すれば、調子の良しあしで25人目と日々ベンチ入りを入れ替えていく形がとれる。球団によっては「期待枠」と称して、有望株を常にここに入れておき、2軍のデーゲームで一気に結果を残して気分の良いまま、ナイトゲームの1軍で起用することもできる。

 この枠を投手で使ってもいい。例えば、先発がローテーションの谷間で弱い時や、連戦が続く時などは、中継ぎにこの枠を使える。監督からすれば、積極的に投手交代をしやすくなるはずだ。もちろん、大リーグで話題の、救援投手が先発して1イニングを抑えて、2番手に本来の先発を置く「オープナー」といった戦術をとる可能性も広がってくるし、試合ごとのゲームプランに弾力性が生まれる。故障した選手で、「10日間休ませるわけにはいかないが、数日休養が必要」といった場合に、この枠を利用することもできる。たかが1人と思ってはいけない。うまく利用できたかどうかで、チームの順位も変わるだろう。

 巨人のV9時代から始まって2000年くらいまでは「9人野球」こそ、安定した戦いを生むには重要で、常勝軍団を築くには、いかに質の高い9人をそろえるかという点に主眼が置かれていた。レギュラーは故障があっても出続ける。だが、今は違う。ベンチ入り25人をどう使い切り、力を最大化するか。FA制度などを利用して移籍が活発となる中で、固定した戦いは、逆にチーム力を発揮する上で足かせとなることも増えた。この制度改革で、レギュラーとベンチの線引きはより薄れてくる気がする。

著者プロフィールを見る
東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

東尾修の記事一覧はこちら
次のページ